「行商」は宝船  (9)

 気温、湿度が上がってきて、毎日の食卓でも「しゃっきり」「さっぱり」「ひんやり」したものがよく売れるようになりました。ちょっと前は「身体が冷えそう」と敬遠していたキュウリ、トマトを今ではおやつのようにポリポリむしゃむしゃ。家族みんなの手が自然に伸びる。みずみずしいキュウリを身体に入れるとお腹がすーっとします。

 今月に入ってから、週2回のペースで上賀茂の農家さんが車でわが家に立ち寄って下さるようになりました。いわゆる「行商」です。トマトやインゲン、キュウリや賀茂ナス、甘トウガラシ……どれもとびきり新鮮で美味しくて。軽自動車のワゴンの中はぴかぴかの野菜がぎっしりで、まるで宝船のよう。

 私の一番お目当てのトマトはひとつひとつがずっしり重く、全体が真っ赤。スーパーでは滅多に手に入らないような完熟トマトです。欲しい分だけザルに入れての量り売り。毎回2キロほど買いますが、それでも3、4日ですっかり食べてしまうのです。一番大きいものを量ったらなんと465グラムもありました。一体どんな風に枝に下がっているんだろうか……畑を見てみたくなる。包丁を入れると、切り口から水気があふれ滴り落ちます。このつゆが旨み。大ぶりでも味は濃くて甘い、爽やかな青い香りが立ち上ります。

 元々この農家さんは、300メートルほど離れたお宅にいらしていたのですが、時間を見計らって駆けつけるもタイミングが合わず涙なみだ、なかなか出会えずの連続。なんとかそこの奥さんに取り次いでもらって、うちにも寄っていただけるようお願いしたのでした。そうしたら今度はうちのご近所さんも楽しく集まりだして、いい展開に。

 行商で回ってもらえるしくみ、本当にありがたいなあと思います。新鮮な野菜を食べられることの幸せ。取り次いで下さった奥さんにも感謝です。

 暑さ寒さの厳しい京都で過ごしていると、身体が四季の変化についていこうと頑張っているのがわかります。季節のものを食べるのは体調を整える上でも大事なことなのですね。東京暮らしでは気がつかなかった身体の内なる声に耳をすませるようになった今日この頃です。

 

(2015.6.25. 京都新聞掲載)