モーニング行こ   (11)

 子どものころ、姫路にある父方の祖父母宅へ泊まりに行くと、翌朝は決まって喫茶店の「モーニング」を食べに連れて行ってくれたものでした。

 じゅわっとバターが染みこんだきつね色のトースト。薄手のカップに入った紅茶。小さなサラダにゆで卵。シュガーポットの中にはキラキラ光るグラニュー糖。私の隣の椅子には四つ下の妹が、真向かいには新聞を広げている祖父がいます。「紅茶熱いから気ぃつけなさいね」と祖母がにこにこしている。

 朝からお出かけ、朝食を外に食べに行くなんてとびきり珍しいこと。晴れがましくておいしくて洒落(しゃれ)ているなあ! と子ども心に思っていました。

「東京にはモーニング文化があらへんなあ」と京都の友人が言っていたものですが、なるほど京都には早朝営業の店が結構ある。うちの近所にも思いつくだけで三つの小さな喫茶店が。パン屋さんも早いし、朝の早い街なのですね(夜も早い)。

 窓越しに見えるのは、常連さんらしき方々が寛(くつろ)いでおられる姿。お店ってお客さんが入っていてこそ魅力的に映ります。老若男女、のんびりさんも慌ただしい人も、みんなお得なモーニング。思い思いの時間を過ごす場所となっている。

 モーニングサービスの略なんですが、あれをひと言で「モーニング」と決めつけるところも簡潔で素敵です。英語の「MORNING」ではなく、「ぐ」の音をちゃんと発音して、これはもう立派な日本語ですよね。

 今回撮影をさせていただいた〈cafe進々堂〉さんは京大の北門前にあるクラシックなお店。木の長テーブルと長ベンチが特徴で、どこか学校の食堂のような、図書館のような落ち着く雰囲気。熱々のミルクコーヒーをそろそろと啜(すす)り、かりっと香ばしいマフィンを一口。幸せな朝ご飯を久々に満喫しました。

 わが家は今はまだ下の子が小さいので、喫茶店そのものにも滅多に行けませんが、いつかゆっくりモーニングを! と小さな夢を持っています。

 一日の計画を練りながら、もしくはゆっくり本を読みながら過ごせる「朝」よ、早く来い!

 

(2015.8.27 京都新聞掲載)