一年で最も好きな季節  (8)

 緑が濃い! 濃いですねえ。1年のうちで最も好きな季節になりました。あっちもこっちも芽吹いている。近所の並木道、小指の先ほどだったイチョウの葉がみるみるうちに大きく分厚く。シロツメクサのじゅうたんもやわらかな葉が茂って、素足をのせるとひんやり、気持ちがいいのです。ツバメはせっせとヒナを育て、近所のちび猫もにゃあにゃあ鳴いて母さんを呼んでいる。お宅も大変ねえ、とつい声を掛けたくなるのは、わが家にも「おちゃのむ」「おなかすいた」「もっとたべる」「これよんで」とわいわい騒がしい2歳児がいるからです。

 さあさあ庭に出よう。母さんは草むしり、君はおままごとだよ。この小さな暴れんぼうは外に出すとせっせと砂利をバケツに入れ、葉っぱをむしり、ダンゴムシに興味津々、夢中になって遊んでいてくれる。上の娘は日なたぼっこしながら読書。

 草むしりをしていると、時間が経つのがあっという間ですね。種類によって根っこが深く潜っていたり球根がついてきたり、違いがあるのが楽しいのです。雑草、と言ってすぐ抜いてしまうのも忍びないので、花が咲いているのは残してみたりもします。でもこうすると、どんどん増えていくのが悩みの種。

 鉢植えの植物も花がらを摘んだり短く刈り込んだりと、手を加えていきます。そろそろ夏野菜の苗も植えなくちゃ。思いを巡らせている私の周りで、小さなハチが花を求めてうろうろ、アリがごちそうを担いで目の前を通り過ぎ、生まれたてのカマキリも堂々と闊歩している。

 うちにはカエデの木が二本あり、これが五月晴れの空を見上げるたびに視界に入ります。爽やかなグリーンに心が洗われる。爽やかだなあ爽やかだなあと毎日思っていたのですが、ここ2、3週間で茂りに茂って、爽やかを通り越し全体がもっさりしてきました。梅雨に入る前に、蒸れないように枝を透くか。思いつきで高枝バサミとノコギリを出してチョキチョキ、ギコギコ。ふと見るとカエデの根元の「龍のひげ」たちも枯葉が目立つ。熊手を出してきて除いてやるか。やり出すととまらない庭仕事。頭のなかまで緑色に染まっていきます。

 

 (2015.5.28. 京都新聞掲載)