茶所訪れ挽き茶体験  (12)

 しゃかしゃかしゃか。ある日小三の娘が抹茶を点(た)ててくれました。畳に正座、盆手前です。浴衣を引っ張り出して着ています。秋だけどそういう気分なのね。この間、小学校の茶道部に入ったのです。先生から教わることを断片的に再現するのがやっとのようで、びっくりするくらいのマジメな顔。普段と違う一面が見られて面白いなあ。

 私はティータイムが大好き。紅茶、中国茶も好きですが、京都へ越してきてからは日本茶を飲む頻度がぐんと上がりました。茶葉は近くのお店で少量ずつ買います。新鮮さが大事。ほうじ茶や煎茶、玄米茶と、時々の気分で楽しんでいます。

 先月は京都府のお仕事で府南部のお茶にまつわる場所を訪れる機会をいただきました。南山城村の広々とした茶畑の景観を愛(め)で、煎茶の祖と言われる永谷宗円の生家を訪問、お話を伺う。宗円は抹茶のもととなるてん茶の製法を応用して煎茶を作った人。自ら江戸の茶商を回って売りこみ、色の美しさと味で人々を魅了し、その普及に努めたと言われています。この地でいにしえに思いを馳せていただくお煎茶の馥郁(ふくいく)たること!

 宇治の中村藤吉本店で抹茶の挽き茶体験をしたときには、石臼の重さにびっくりしました。なかなか上手く回らないのです。聞けばおよそ百年前のものとのことで二度目のびっくり。横にあったすべすべ肌の美しい石臼は200年ものだそう。取っ手は竹、目に見えない部分の部品は梅と松の木が使われているとのことで3度目のびっくり(松竹梅ですよ!)。昔は携帯できる大きさの石臼、コーヒーミル大のものもあったそうで、当時の方々も今と変わらず「挽き立て」への情熱があったのだなあと、共感を覚えました。

 お茶の時間はなごみの時間。自分のため、家族のため、お客さまのため、お湯を沸かして丁寧に淹(い)れる。たった数分の、でもとても豊かなひとときです。

 娘のお茶もふんわりきれいに点てられて、ようやく笑顔に。その後いそいそと自分の栗まんじゅうを頬張って、さらにまあるい笑顔になりました。

 

  (2015年9月24日 京都新聞掲載)